昨夜、書き終えて、月曜日の、今日は祝日らしいから、穏やかな朝である。
去年の秋に、おおきな作品をつくった。おおきな作品というのは、一言ではむつかしいけれど、ぼくとしてはおおきな作品だった。
おおきな作品をつくってみて、そこでしか得ることができない快感もあったし、空間として、時間として、やはり自分はあたらしいリズムとか、さらには、生きるとか死ぬとかいう感触を操作しながら、おおきくてもいろんなことを試すことができるのだと確信した。
しかし同時に、あの作品をつくってしまった代償のようなはね返りも、想像以上におおきかった。あれに至るまでの、ぼくたちの流れ。いろんなサイズで大切にしてきた音。記憶。それを、ある意味で断ち切っていないだろうか。しかもぼくはあの作品を日本に置いて、海外ツアーに出てしまったから、自分の目で、あの作品の最後を見届けることができなかった。はじめて、マームとジプシーはふたつに分かれて活動した。日本でおおきな作品を守るメンバーと、海外であたらしい土地を目指すメンバー。ぼく自身もバラバラのまま、どっちつかずのカラダを引きずって海外へ発った。なんとも形容できない、おおきくて得体の知れない塊のようなものが、重くのしかかったまま。
旅をした。
そう、ぼくらは旅を続けた。
見知らぬ風景のなかを旅していくなかで、おぼつかない意識で。日本に残してきたものをアタマでぐるぐるさせながら。ぽつぽつ綴っていたのが、この作品である。
記憶を扱ってきた、ぼくとして、マームとジプシーとして、この次は。きっと、未来を描くだろう。
未来としての作品には、この三人が出演してほしかった。そしてそれが叶った。
日本って、未来って、そこに生きるコドモって。
やっぱりどうやら、カタチノチガウ、コドモたちが、今日もまた産まれて、未来に放り出されている。
穏やかな朝を、どうか。
2015年1月12日 朝。
藤田貴大
http://mum-gypsy.com/wp-mum/archives/works/20150209-2
- 公演名
- マームとジプシー『カタチノチガウ』
- カンパニー
- マームとジプシー
- 公演日
- 2015 年 2/9 - 2/13
- 場所
- 横浜美術館レクチャーホール
- 公式URL
- http://mum-gypsy.com/wp-mum/archives/works/20150209-2
- クレジット
- 出演
青柳いづみ 川崎ゆり子 吉田聡子
スタッフ
作・演出/藤田貴大
衣装/スズキカユキ (suzuki takayuki)
舞台監督/森山香緒梨
音響/角田里枝
映像/召田実子
照明/荻原綾
照明協力(横浜公演)/ 富山貴之
チラシデザイン/吉田聡子
映像(文字デザイン)/名久井直子
字幕/門田美和
制作/林香菜
Other Member/石井亮介 斎藤章子 Luisa Zuffo
横浜公演アフタートークゲスト
2.11 15:30 名久井直子(ブックデザイナー)
2.11 18:30 穂村弘(歌人)
2.13 16:00 川上未映子(小説家・詩人)
- 撮影クレジット
- 撮影:佐々瞬、佐々木雄一、須藤崇規
編集・監督:須藤崇規 - 映像公開
- 非公開
- 映像公開URL
- メディア
- DVD, データ